【2025年最新】馬祖東引のアクセスからおすすめ観光地と島内の移動方法を解説します

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連江

台湾の離島と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは澎湖や金門かもしれません。しかし、台湾本島から最も遠く離れた場所にも、まだ見ぬ魅力に溢れた秘境があります。それが、馬祖(マーズー)諸島を構成する最北端の東引(ドンイン)です。

目の前には中国大陸が広がり、かつては軍事上の要衝とされたこの島は、独特の歴史と文化、そして手つかずの自然が息づいています。今回は、そんなディープな魅力を持つ東引へのアクセス方法から、効率的な島内の巡り方、そして訪れるべき観光スポットまで、東引訪問時にはぜひ行っておきたい観光地を、実際に足を運んだ時の経験からまとめていきます。

東引はどんなところ?

東引は、台湾本島の北西に位置する馬祖諸島の一つです。台湾本島からはるか遠く離れており、その地理的特徴から独自の発展を遂げてきました。目と鼻の先に中国大陸があり、晴れた日には、大陸が肉眼で確認できるほどの近さです。そのため、台湾の最前線とも言われ、現在に至るまで軍が駐留する島となっています。

東引と呼ばれる場所は、正確に言うと東引島と西引島の2つの島からできています。もともと東引島と西引島は離れており、間には中柱島という岩礁がありました(引き潮時には東引島と繋がっていたらしい)。東引島と西引島は小船で荷物などを輸送するしかなく、天候などによって不通となることも多々あったことから、2島の間に橋を建設することとなりました。1976年に中柱橋(介石橋)と呼ばれる東引島と中柱島を結ぶ橋が先に開通し、のちの1986年に西引島までの全線が開通、2013年にはさらに道幅を広げた橋が建設され、車がすれ違うことができるようにもなりました。

向かって右手が東引、左手が西引。中央に橋が造られています

*西引島も広義では東引に含まれるため、普通はまとめて東引と呼ばれているようです。

東引へのアクセス方法

馬祖諸島の中でも東引が特別なのは、唯一、台湾本島から飛行機で行くことができないという点です。島へのアクセスは、船旅が基本となります。

基隆(ジーロン)港から夜行フェリー

多くの旅行者が利用するのが、台湾北部の基隆港から出ている夜行フェリーです。東引島まではなんと約8〜13時間! 台湾本島から最も遠い離島であることを実感できる、長い船旅です。船内で1泊する形になるので、時間を有効に使いたい方におすすめです。

基隆 – 東引の夜行船は、2つのルートがあり最短で8時間程度、遅い場合は13時間ほどかかります。

馬祖南竿(ナンガン)島からのフェリー

馬祖諸島の中心的な島である南竿島からも、東引島へのフェリーが出ています。所要時間は約2時間と、基隆からのルートに比べると短時間でアクセスできます。南竿島までは台北松山空港や台中空港から飛行機が飛んでいるので便利です。もし馬祖諸島の他の島も巡りたいと考えているなら、南竿島を経由するルートも選択肢の1つになるでしょう。

東引のホテルと島内の移動方法

東引島と西引島から成る東引ですが、港、飲食店、ホテルなど街の中心のほぼ全てが東引島の中心地である「中路老街」という階段状のストリート周辺に集中しています。島内観光はこの周辺を起点に組み立てていくこととなります。

おすすめのホテル

バイクを借りて島内観光する方以外は、やはり「中路老街」周辺に位置しているホテルを予約するのがいいです。AgodaとかBooking.comでマップ検索できるので、中心街に近いところを予約することをお勧めします。

おすすめは、小島上二館。東引に昔からある建物をリノベしたホテルで、趣のある空間でステイすることができます。

ほとんどのホテルは港への送迎がある

東引の多くのホテルは島の入口である中柱港から車で5-10分程度の場所にありますが、傾斜に沿った街並みで徒歩でのアクセスは相当しんどいです。かつ公共交通機関が無い(タクシーもほぼ無い)というのも理解しておく必要があります。

港から見える東引の街並み

東引のほとんどのホテルは中柱港との往復送迎付きです。運行時間は東引に到着する船の時刻に合わせていて、船が早朝の到着であっても対応していますよ。

チェックインアウト時刻が特殊

東引のホテルで特殊なのは、チェックインアウト時刻がどこも早朝に集中していること。予約時にこの情報を見ると戸惑うかもしれませんが、これは東引の船の発着時刻が早朝に集中しているからです。

Agodaサイト情報より

東引への夜行船にはシャワーがないため、早朝チェックイン開始はとても助かるんですよ。到着後にシャワーを浴びてから島内観光に出かけることも可能になります。

島内の移動方法

東引内には電車も路線バスもありませんが、観光客向けの便利な移動手段が用意されています。

(最も基本)バイクを借りる

台湾で最も一般的なバイクのレンタル。東引では各ホテルが宿泊客向けにバイクレンタルを行っています。台湾の各地で見られるバイクレンタルショップのようなものは無く、港周辺にもそのようなお店は無いのでご注意を。ホテル予約後にホテルとのやりとりの中でバイクをレンタルしたいか聞かれるはずです。

なお、台湾のバイクは125cc以上が一般的。これに乗るには日本の免許では中型免許以上が必要です。50ccサイズ(原付)のバイクは東引にはありませんので、普通免許しかない方はご注意ください。また、Gogoroのような電動バイクも東引にはありません

さらに、自転車(レンタサイクル)も東引にはありませんので、ちょっとした移動は徒歩に限られてしまいます。

これらの情報は、2025年6月に現地ホテル担当者に直接確認して得られた情報に基づきます。

台湾好行クルーズ式バス

「台湾好行」のクルーズ式バス(中国語で郵輪式という)は、あらかじめ決められた複数の観光地を半日かけて巡ってくれるサービス。300台湾ドルで主要なスポットを効率よく回ることができます。東引島が初めての方や、効率的に観光したい方には特におすすめの移動手段です。

台湾好行(東引クルーズ式)の概要
– 午前午後の2本を毎日運行(内容は全く同じ)
-主要観光地をガイド付きで巡ってくれる
-1人から催行される

幸福巴士(シンフーバス)

こちらは、いわゆる乗り合いタクシーのようなサービスです。台湾のいくつかの自治体で提供されているサービスで、任意の場所から任意の場所へと送迎してくれます。料金は片道15〜20台湾ドルと破格の安さですが、事前の予約が必要なことと、2人以上の利用が条件となる点には注意が必要です。グループ旅行には便利かもしれませんね。

1人旅の時点で僕は選択肢からは外しました。また、電話での予約が基本なので、台湾の番号を持っていないと予約が取れないのも難点。

タクシー

東引島にもタクシーはありますが、なんと島全体で7台しかありません! ハイシーズンには争奪戦になることもあるので、利用する際は早めに確保するか、台湾好行バスと併用するのが賢明です。例えば、東引島の中心である中路老街から西引の端にある三山據點まで片道250台湾ドルでした。

賢い巡り方

基本的な観光は台湾好行で主要スポットを網羅し、それ以外の「もう少し見てみたい」場所や、自由に動き回りたい場合はタクシーを適宜利用するのがおすすめです。限られた時間で東引を満喫するためのベストな組み合わせだと思います。

東引は現在も軍が駐留する島であり、立ち入り禁止や撮影禁止の場所がたくさんあります。注意書きがあったりしますが、中国語に不安がある方は観光用に整備された台湾好行(ガイド付き)で安心安全に旅行することをお勧めします。

東引のおすすめ観光地

東引中柱港

東引中柱港は、馬祖列島の最北端に位置する東引島の玄関口です。台湾本島や馬祖南竿島からのフェリーが発着する港であり、島の物流と観光において非常に重要な役割を担っています。「中柱港」という文字が掲げられ東引まで遥々来たんだと実感させてくれる場所です。

港の周りには軍事施設を除いてほとんど何もなく、お店やバイクのレンタルショップすらありません(東引では宿泊施設でバイクを借りるのが主流です)。

東引中柱港へのアクセス
基隆港から船で約8時間から13時間(偶数日・奇数日発で異なる)
南竿福澳港から船で約2時間

馬祖酒廠東引展售中心暨旅遊資訊站

東引島の名産である高粱酒を中心に、馬祖の特産品を購入できるスポットです。観光案内機能も兼ねており、東引の観光情報や地図も手に入ります。僕が訪問した時は、高粱酒の試飲を勧められ2杯ほどグビッといきました。

ここは東引の中心地に位置しており、台湾好行バスの集合地点でもあります。

馬祖酒廠東引展售中心暨旅遊資訊站へのアクセス
中路老街から徒歩5分

東引遊客中心

東引遊客中心(東引ビジターセンター)の館内には島の地図や観光情報、自然や歴史に関する展示があり、見どころを効率よく回るための出発点として便利です。ただし、中心地からは少し離れた場所にあり、Google Mapでは中路老街から徒歩15分ほどと出ますが、もっとかかるんじゃないかと思っています。

台湾好行バスのルートに組み込まれており、最初の目的地でもあります。

東引遊客中心へのアクセス
東引中柱港から徒歩10分(ただし、港から見た感じ、相当傾斜がある坂道を登る必要あり)
または、台湾好行バスで1つ目

東引島燈塔

東引島燈塔(東引灯台)は、東引島の北端、断崖の上に建つ白亜の灯台で、台湾最北端に位置する灯台として知られています。フランス人技師によって設計され、1904年に完成した歴史ある建築物で、洋風のデザインが特徴です。

晴れた日には、灯台の周辺から碧い海と壮大な岩肌を望むことができ、夕暮れ時には絶景のフォトスポットとしても人気があります。周囲は風が強いことが多いですが、その分、果ての島に来た実感を強く味わえる場所です。

東引島燈塔へのアクセス
中路老街から徒歩50分
または、台湾好行バスで2つ目

太白天聲

太白天聲は、東引島の北部に位置する断崖の景勝地で、波の音が岩壁に反響して“天から響く声”のように聞こえることから名づけられました。長年の海蝕によって形成された巨大な岩穴や断層が見どころで、自然の力強さを肌で感じられるスポットです。東引島燈塔に登る途中にあります。

周囲は遊歩道が整備されており、途中には展望台もあります。晴れた日には深い青の海と白い波のコントラストが美しく、フォトスポットとしても人気です。

太白天聲へのアクセス
中路老街から徒歩50分
または、台湾好行バスで2つ目の東引島燈塔に向かう途中に立ち寄ることができます

烈女義坑

烈女義坑(れつじょぎこう)は、東引島の北部にある断崖の谷間で、悲しい伝説が残る場所として知られています。昔、清朝時代に海賊に襲われた際、村の女性が名誉を守るため自ら身を投げたと伝えられており、その勇気を称えて「烈女義坑」と名づけられました。

現在は展望台が整備され、深く切り立った岩壁とその下に広がる青い海を見下ろすことができます。岩壁に挟まれた空間に迫り出すように設置された展望台は圧巻です。静かな空気の中に歴史の重みを感じる、東引島の中でも印象的なスポットです。

烈女義坑へのアクセス
中路老街から徒歩40分
または、台湾好行バスで3つ目

一線天

一線天は、東引島の北部にある自然が生み出した細い裂け目のような岩の隙間で、上を見上げると空が一本の線のように見えることから名づけられました。長年の風と波の浸食によって形成されたこの地形は、東引の壮大な自然の造形美を間近で感じられるスポットです。

岩壁の間を歩くと、ひんやりとした空気と潮の香りに包まれ、まるで別世界に迷い込んだような感覚を味わえます。写真映えする場所としても人気があり、晴れた日の光の差し込みが特に美しいと評判です。

一線天へのアクセス
烈女義坑から徒歩7分
または、台湾好行バスで4つ目

安東坑道

安東坑道は、東引島に残る代表的な軍事遺構のひとつで、かつて掘られた地下トンネルです。山の内部を貫くように造られた坑道は、当時の軍事的緊張を物語る貴重な史跡となっています。

内部は堅固な花崗岩をくり抜いて造られており、今でも当時の構造や銃眼、弾薬庫の跡などを見ることができます。現在は一部が観光用に整備され、トンネル内の涼しさと薄暗い空気が独特の雰囲気を醸し出しています。

安東坑道へのアクセス
中路老街から徒歩26分
または、台湾好行バスで5つ目

印地安人與小狗頭

印地安人與小狗頭(インディアンと子犬の頭)は、東引島の海岸に見られる奇岩で、自然が作り出したユニークな造形として人気のスポットです。長年の風と波の浸食によって形づくられた岩が、まるで横顔のインディアンとその隣に寄り添う小さな犬のように見えることから、この名で呼ばれています。

見る角度によって岩の表情が微妙に変わり、朝夕の光が当たる時間帯にはシルエットがよりはっきり浮かび上がります。荒々しい海と調和した自然の芸術品のような景観です。

印地安人與小狗頭へのアクセス
安東坑道を奥まで進み、海岸沿いまで出たところから望むことができます

老鼠沙獅子回眸

老鼠沙獅子回眸は、東引島東部の海岸線に位置する奇岩群で、自然の風化と波の侵食によって生まれた独特な岩の造形が特徴です。遠くから見ると、まるで砂浜の上で振り返るネズミの姿に見えることからこの名が付けられました。

海風にさらされた岩肌は年月を感じさせ、周囲の断崖や青い海とのコントラストが非常に美しく、東引でも特に幻想的な風景が楽しめる場所です。波の音とともに、まるで生き物が今にも動き出しそうな迫力を感じられます。

老鼠沙獅子回眸へのアクセス
安東坑道を奥まで進み、海岸沿いまで出たところから望むことができます

國之北疆

馬祖列島は台湾が管轄する最北の島群です。列島は台湾本島から約200キロ離れ、東引島の北に位置する北固礁(N26°22’58″、E120°28’34.0″)が「国之北疆」と呼ばれています。2006年に馬祖国家風景区管理処がここを整備し、「国之北疆」と刻まれた記念碑、緯度経度を記した標柱、さらに「北疆祈願鎖鏈」が設置されました。

観景台の西側には「三色石」と呼ばれる有名な岩礁群があり、波に浸食された岩の層が「十八羅漢岩」とも呼ばれる独特の風景を作り出しています。

国之北疆へのアクセス
台湾好行バスで最後に立ち寄るスポット

東引三色石(羅漢坪)

東引三色石は、東引島の北西部・羅漢坪(Luòhànpíng)と呼ばれる沿岸地域に位置する、東引を代表する自然景観のひとつです。波や風による侵食作用と長い年月の地質変動によって生まれたこの岩石群は、白色・黄褐色・深灰色の三層から構成されており、その美しいコントラストが「三色石」の名の由来となっています。

主要な岩石層は約1億1千万年前に形成された花崗片麻岩(かこうへんまがん)で、その後のマグマの貫入によって異なる色の岩層が重なり合いました。上層は淡灰色、中層は黄褐色、下層は深灰色という三層構造がはっきりと確認できます。

周囲の海岸には海食洞や岩礁が連なり、荒々しくも荘厳な景観を形成しています。この地は長年、東引島の人々に「羅漢坪(Luòhànpíng)」と呼ばれており、「十八羅漢岩」とも称される一帯の岩礁群とともに知られています。つまり、「三色石」は羅漢坪地区の中に位置する代表的な岩石景観です。

東引三色石(羅漢坪)へのアクセス
国之北疆の展望台から見ることが可能

忠誠門

忠誠門は、東引島のシンボル的存在ともいえる大きな門で、海岸沿いに堂々と建てられています。東引の歴史を感じるランドマークとなっています。門の背後には青い海が広がり、写真映えする絶好の撮影スポットでもあります。特に夕暮れ時には、門越しに沈む夕日を眺めることができ、訪れる人々を魅了します。

忠誠門へのアクセス
中路老街を降ってすぐ

二雙青蛙

かつてこの場所は波が打ち寄せる砂利浜で、「二雙青蛙」と呼ばれるカエルの形をした2つの岩が並んでいました。片方は北を、もう片方は南を向いており、地元の人々の間では「その年にカエルが鳴くと魚が豊漁になる」と信じられていたそうです。

1950年代、国軍が東引に駐屯して港や道路を整備する際、このエリアの埋め立て工事でその「カエル岩」が失われてしまいました。工事中は3日間強風が吹き荒れ、海も荒れたと伝えられています。

その後、地元の劉義光氏(1917–2017)は、故郷の福建省長楽の潭頭村で似た形の岩を見つけ、東引の「カエル岩」を再現するために持ち帰り、この場所に設置したといわれています。これにより、かつての伝説と記憶を後世に伝える象徴として「二雙青蛙」が復活したのです。

二雙青蛙へのアクセス
忠誠門の前

中路老街

中路老街は、東引島の中心部に位置する古い通りで、かつて島の商業と生活の中心として栄えた場所です。戦時中や離島開発の時代には、兵士や住民でにぎわい、雑貨店や食堂などが軒を連ねていました。

現在も古い石造りの家屋やアーチ型の通りが残り、往時の面影を感じさせるレトロな雰囲気が漂います。小規模ながら、地元の食堂や商店が営業しており、島の素朴な日常に触れられるスポットです。夕暮れ時に散歩すると、静けさの中にどこか懐かしさを覚えるでしょう。

中路老街へのアクセス
中柱港から徒歩15分

東引鄉劉依祥宅

中路老街は、東引島における重要な文化・歴史・産業の通りであり、その歴史は中華民国初期までさかのぼります。南澳碼頭(現在の忠誠門)から山の上へと続くこの階段道には、多くの商店や貿易業者が集まり、東引の漁業と商業が最も盛んだった時代、さらに軍政期における軍民のにぎわいと経済繁栄を見届けてきました。その繁栄ぶりから、人々の間では「千人が踏み、万人が歩いた」と語り継がれています。

中路老街の中心に位置する「劉依祥宅(住所:樂華村36号)」は、連江県政府によって登録された歴史建築です。2022年末からは「祥記商店」展示館として一般公開され、かつて劉依祥氏がここで営んでいた雑貨店を当時の姿そのままに再現しています。この展示では、東引が「戦地政務時期(軍政時代)」にあった頃の、軍人と住民が共に生活していた様子を伝えています。

この展示館は、忠誠門(港エリア)、謝宅(行政中心)、中路商圈(民生と貿易の中心)をつなぐ歴史軸の中核を成しており、「中路故事館(中路ストーリーハウス)」博物館群の中心的存在として位置づけられています。

東引鄉劉依祥宅へのアクセス
中路老街からすぐ

水下考古博物館-蘇布倫號主題展

東引島で2番目に開設された常設展示館であり、「中路故事館(中路ストーリーハウス)」博物館群の一員です。

今から約120年前、イギリスの貨物船「サブロン号(SS Sobraon)」が東引海域を航行中に座礁し、北固礁付近の「鉄坑」と呼ばれる場所で沈没しました。この船は1900年にイギリスで登録された貨物船で、1901年に初めて極東航路を航行。上海から香港を経てロンドンへ帰航する途中、東引海域の荒波により座礁したといわれています。この海域の激しい波こそが、東引の旧名「東湧(とうゆう/Dongyong)」の由来にもなっています。

事故当時、船員や乗客は地元の漁民の救助によって全員無事に避難しました。この事件は後に、東引島の象徴的建築である「東湧燈塔(東引灯台)」建設の契機にもなりました。断崖の上にそびえる白亜の灯台と、眼下に広がる青い海の対比は圧倒的な美しさを誇ります。灯台背後にある付属建物群は、英国人技師による18世紀の英国風建築で、急斜面に沿って建てられ、石段で互いに結ばれたその佇まいは、馬祖の伝統的な集落景観とも調和しています。

「サブロン号」は1901年以来、東西引の海底で静かに眠り続けてきましたが、2013年に水中文化遺産の調査チームが発掘調査を実施。船の遺物や積荷の一部を引き上げ、それらを展示・公開することで、120年前の歴史を現代に伝えています。

水下考古博物館-蘇布倫號主題展へのアクセス
中路老街からすぐ

鉄騎堡

鉄騎堡は、東引島で最も集落に近い軍事拠点で、中柳村の民家のすぐそばに位置しています。かつては港の防衛を担う重要な前線基地であり、東引の玄関口・中柱港を見下ろす位置に築かれました。その名は「鉄の騎士の砦」を意味し、堅牢な構造と勇ましい防衛精神を象徴しています。

堡の入口近くには「中流砥柱」と刻まれた牌楼(門柱)が立っており、これは“流れの中で砥石のように踏みとどまる柱=逆境の中でも支えとなる存在”を意味しています。実際、東引の「中柳村」という地名は、この「中流砥柱」に由来して名づけられました。

堡の前には、港の方を静かに見つめる銅製の軍用犬像が設置されており、かつてこの拠点が敵の上陸を防ぐために警戒任務を担っていたことを今に伝えています。展望も素晴らしく、眼下には東引中柱港の商店街や港湾エリアが広がり、さらに遠くには東引島と西引島をつなぐ中柱橋を一望できます。

鉄騎堡へのアクセス
中路老街から徒歩5分

其介如石

其介如石は、東引島を象徴する精神標語のひとつで、中柱堤周辺に刻まれています。この言葉は、総統・蔣中正(蒋介石)の揮毫(直筆)を兵士たちが石に臨書して刻んだもので、彼の革命人生と不屈の人格精神を象徴しています。

語源は『易経・豫卦』の一節「介于石」に由来し、経伝には「上交不諂,下交不瀆,不改其操介如石焉」とあります。これは「上位の者にへつらわず、下位の者を軽んじず、信念を曲げず、節操を石のように貫く」という意味であり、操守の堅さ・意志の強さを象徴しています。

東引島では、このような精神標語が軍事遺構や堤防、断崖の岩壁などに刻まれており、かつての「戦地政務時期(軍政時代)」に築かれた精神文化の名残として今も見ることができます。中柱堤一帯には「固若金湯(鉄壁の守り)」「其介如石(信念の堅さ)」「中流砥柱(逆境に立つ支柱)」といった言葉が並び、当時の防衛意識と精神的支柱を感じ取ることができます。

其介如石へのアクセス
中路老街から徒歩で5分

中柱感恩亭

中柱感恩亭は、中柱堤から西引方面へ向かう途中、涼み台のそばに建つ東屋で、東引を象徴する記念スポットのひとつです。ここには蒋経国氏の坐像が安置されており、島の軍民たちが、彼が行った東引の重要インフラ建設や島の発展への貢献に感謝の意を示すために「感恩亭(感謝の亭)」と名づけました。

亭の内部には、蒋経国氏が南に向かって穏やかに座る像が置かれ、「親切自然、奉獻犧牲(思いやり・自然体・献身・自己犠牲)」という彼の精神を象徴しています。赤い屋根と白い柱が印象的な建物で、周囲の青い海と調和し、静謐な雰囲気を漂わせています。

展望台としても優れた場所で、感恩亭に上ると東引島と西引島を360度見渡すことができます。夏には陽光を受けて輝く海面が美しく、冬には冷たい潮風が頬を打ち、季節ごとに異なる表情を見せてくれます。

中柱感恩亭へのアクセス
中路老街から徒歩で15分

西引人定勝天

西引人定勝天は、西引島の高台に建つ巨大な石碑で、「人は努力によって天をも制す」という意味をもつ力強い言葉が刻まれています。これは1970年代、東引・西引両島の軍民が、厳しい自然条件と孤立した離島環境の中で防衛建設や生活改善を成し遂げた精神を象徴するものです。

石碑の文字は堂々とした筆致で刻まれ、遠くからでもはっきりと読めるほど大きく、訪れる人々に強い印象を与えます。周囲は断崖絶壁と青い海が広がる絶景地で、特に晴れた日には海と空の境目が溶け合うような美しい眺望を楽しむことができます。

「人定勝天」は単なる標語ではなく、東引・西引の島民と駐屯兵士たちが、過酷な環境を克服し、島を守り抜いた誇りと信念の象徴でもあります。

西引人定勝天へのアクセス
中柱感恩亭から徒歩で5分

三三據點

三三據點は、東引島(西引)の最西端に位置する軍事遺構で、かつての東引防衛線の要所として知られています。その名称は、かつて東引指揮部が軍事上の必要から、島の最東端・世尾山を「1号高地」と定め、西引島の最西端を「33号高地」と呼んでいたことに由来します。三三據点はまさにその「33号高地」にあたる場所で、地元では「西鼻」とも呼ばれています。

当時、軍による刻石の誤りがあったため、現在では「三山據點」という別名でも知られています。冷戦期には島全体が要塞化され、海岸線には「五歩に一岗、十歩に一哨(5歩に一つの警備所、10歩に一つの監視哨)」というほど密に防衛拠点が配置されていました。三三據点もその一部として、海蝕地形を活かした堅固な防御施設として設計されました。

現在は観光地として一般公開されており、岬の上からは周囲の海域を一望することができます。海と断崖が織りなす絶景に加え、戦時の緊張感を残すトンネルや bunkers(防御壕)が点在しており、軍事史と自然美の両方を感じられるスポットです。

三三據點へのアクセス
中路老街からタクシーで15分

北海坑道

東引北海坑道は、かつて東引島の防衛拠点として建設された大規模な軍事トンネルで、馬祖列島各地に残る「北海坑道群」のひとつです。北海坑道とは、冷戦期に中国大陸からの上陸を防ぐため、船舶や兵器を隠す目的で掘られた地下港湾施設を指します。

東引北海坑道はその中でも特に険しい地形に造られ、完成度の高い構造を誇りますが、現在は一般公開はされていません。入口周辺のみ外観見学が可能で、内部は立入禁止となっています。

東引島では現在、「安東坑道」が観光客向けに整備・公開されているため、実際に坑道内部の雰囲気を体感したい場合は、そちらの見学がおすすめです。

この記事を書いた人

飛行機や鉄道を使って日本・世界中を旅する30代会社員。ラグジュアリーホテルや飛行機のレビュー、主に台湾方面のまとめ記事を書いています。お問い合わせは日本語・英語・中国語でお気軽にどうぞ!

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